遺産相続の話し合いの進め方

遺産相続の話し合いでは、 いくら親しい間柄であっても、 伝えるべき事をきちんと伝えないと、 思わぬ展開になってこじれてしまうことがあります。

そこで遺産相続の話し合いをするときは、 下記2つのことを他の相続人に正確に伝える必要があります。

①「相続財産」「法律の定め」「自分の気持ち」を隠さずにすべて正直に話す

②家と土地は、なるべく一人の所有者となるようにする

それでは上記の2つがなぜ重要なのか、 解説していきます。


「相続財産」「法律の定め」「自分の気持ち」を隠さずに話す

遺産相続の話し合いをするときは、一番最初に 「相続財産はこれで全部で、あなたには法律でこういう取り分があるけど、 そのように分けるのは難しいので、話し合いでこんなふうにするよ」 ということをきちんと説明しましょう。

いきなり分け合う話し合いをはじめると 「財産は全部でどれだけあるの?」「法律はどうなってるの?」 と聞かれてしまいます。

そして聞かれてからしどろもどろに答えていると、 仲の良い兄弟姉妹でも思わぬところから、 不信感が生まれてしまうものなのです。

遺産相続の話し合いで争いになった人の話を聞いてみると 「まさかこんなにもめるとは思わなかった」 ということを言います。

それでは争うつもりがなかったのに、 どうして争いになってしまうのでしょうか?

それはまず、法律で決められた取り分の通りにわけることは、 現実問題として不可能なので、 話し合いによって法律で決められた取り分を、 大幅に変更することになります。

そして法律で決められた取り分を大幅に変更して、 結果として自分が多くもらってしまうことを他の相続人に話しづらいため、 相続財産や法律の取り分の説明をあえてしない人が多いのです。

こうして意図的に相続財産や法律の取り分の説明をしないと、 他の相続人から 「なんとなくあやしい」「何か隠し事をしているのでは」 という不信感がめばえてしまい、ここから争いに発展していくのです。

最初から何もかも正直にすべてを話しておけばよかったのに、 ほんのわずかなやましさから説明を省いたり、 ごまかしたりするような態度をとったがために、 遺産相続の争いがおきてしまうのです。

そこで遺産相続の話し合いをするときは、
・相続財産を隠さずすべて説明する
・法律で定められた取り分を正直に説明する
・話し合いで取り分を変更したい
ということを先に話しましょう。

こうして相続財産も法律も何もかも、 包み隠さず説明してから話し合いを始めれば、 ほとんどの遺産相続の話し合いはスムーズにすすみます。

もし上記のことを先に話しても、 遺産相続の話し合いでもめるという場合、 それはもともと相続人同士の仲が悪いか、 お金に困っている相続人がいる場合です。

もともと仲が悪かったりお金に困っているのであれば、 どんなに正直に話しても、 法律の取り分を変更するのはとても難しいため、 法律の定め通りの取り分に近づけるようにするしかありません。

それでは法律で定められた取り分も理解して、 他の相続人に説明できるようにしておきましょう。

民法第900条では、 次のように相続の取り分が定められています。

【民法第900条】

配偶者と子が相続人の場合
配偶者  ・・・ 2分の1
子    ・・・ 2分の1(全員で)

配偶者と親が相続人の場合
配偶者  ・・・ 3分の2
親    ・・・ 3分の1(全員で)

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
配偶者   ・・・ 4分の3
兄弟姉妹 ・・・ 4分の1(全員で)

法律で決められた遺産相続の取り分を、 話し合いで変更してよいことを理解して、 他の相続人に説明できるようにしておきましょう。

民法第906条と民法第907条には、 次のように定められています。

【民法第906条】

遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、 各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況 その他一切の事情を考慮してこれをする

【民法第907条】

共同相続人は、いつでも、 その協議で、遺産の分割をすることができる

法律というのは条文の番号が小さければ小さいほど原則を定め、 条文の番号が大きければ大きいほど、 具体的なことが定められています。

そして前の条文と後の条文が矛盾する内容となっている場合は、 後の条文が優先するとされています。

今回の場合は民法900条で法律で定められた取り分を定め、 906条と907条で状況を考慮して、 話し合いで決めてよいと定められています。

したがって法律で定められた取り分よりも、 話し合いの結果が優先される、ということなのです。


家と土地は、なるべく一人の所有者となるようにする

不動産の名義は、 複数名の共同所有とすることも可能です。

しかし固定資産税の支払いや、 不動産の維持費の支払いなどが複雑となるため、 おすすめできません。

ひとつの不動産は、 必ず一人の所有となるようにしましょう。

一般的には、亡くなった方の面倒をみた方を中心として、 不動産をもらう人を決めます。

もし、一人の方だけが不動産をすべてもらうのは多すぎるという場合は、 不動産をもらわない方に現金を支払うことも、 法律では認められています。

たとえば父が死亡し相続財産は、 不動産が1500万円、預金が500万円、合計2000万円とします。

相続人は母、自分、弟だったとします。

この場合、法律上の権利は母に1000万円、自分に500万円、 弟に500万円となります。

そして父の家には今も母と自分が住んでいること、 父の面倒はずっと自分が見てきたこと、 これから母の面倒もみることを考慮し、 弟には不動産を受け取らないようにお願いする。

そして母の介護にお金がかかるので、 預金500万円は母のものにする。

そのかわり兄から弟に100万円を支払う、 などと決めましょう。

このように不動産の名義を誰か一人にするかわりに、 自分の貯金から不動産をもらわない方にお金を払うことを 「代償分割(だいしょうぶんかつ)」 といいます。

「代償分割」は法律で認められた、 遺産相続の話し合いによる相続財産の分け方のひとつです。

実務的にもしばしば使われています。

スポンサードリンク

このページの先頭へ